中学受験を題材にした漫画「2月の勝者」が注目を集め、ドラマ化されるなど社会現象になったのは記憶に新しいところ。小学生でも愛読書にしている人がチラホラいるようで、影響されて中学受験を目指してしまうという話も見聞きします。今回は、中学受験に関する素朴な疑問である「どれくらい世帯年収があればいいの?」という疑問にお答えします。

※筆者は中学受験の経験者であり、現在私立大学で金融リテラシーの授業を担当する実務家教員として非常勤講師という立場でもあります。

■中学受験にかかる主な費用

●中学受験のボリューム

最近は3年生の2月から3年間かけて中学受験に取り組むことが主流となっているようです。30年前は2年かけて受験準備をし、5年生の2月から1年だけ取り組むような人もいました。ただ、時代は変わり受験勉強で学ぶ内容がかなり増えています。

受験が終わった時に、テキストやノートなどの勉強材を重ねると、子どもの身長以上になります。(実証実験しました)中学受験経験のある親がテキストを読んでみれば、自分たちの時代の受験が今と比べて如何に楽だったのかわかるでしょう。(もちろん、30年前も必死に勉強していたはずですが)ファイナンシャルプランナーの資格よりは分量が明らかに多いです。おそらく、弁護士、司法書士、税理士、公認会計士レベルのボリューム感ではないかと思います。3年間必要な理由の1つです。

親の経験だけで、中学受験を判断するのは非常に危険です。親世代と今の世代では、学校の特徴も変わり、偏差値もだいぶ変動している場合があります。中学受験で優秀だった親は、受験を軽く見て、配偶者や子どもに過剰なプレッシャーをかけてしまうことがありそうです。中学受験を経験していない親は、勉強の勘所や費用のかけ処がわからず苦しみそうです。

一方で、受験塾は課金してもらってナンボですから、色々な情報を浴びせてきますし、色々な講座を進めてきます。共働き家庭が多い中、親がどこまで関われるか、どこからどこまで外注(塾や家庭教師、個別指導)を受けるのか、大学受験と異なり浪人が許されない一発勝負ですから親子ともに人生をかけた戦いになります。そのため、受験の成果の有無にかかわらず、親子ともにとても成長する可能性が高いです。

●受験塾の費用

中学受験の費用については塾のホームページを調べたり、説明会、相談会に参加すべきです。塾によって雰囲気が異なりますし、地域や学区によって子どもの雰囲気も変わるようです。

四谷大塚(2024年度)

https://www.yotsuyaotsuka.com/school/yotsuya_fee_new.php

・入会金 22,000円

・1年生 13,200円

・2年生 13,200円

・3年生 20,350円

・4年生 36,300円

・5年生 45,100円

・6年生前半 57,750円

・6年生後半 79,750円

・教材費 各学年16,000~20,000円 

●SAPIX(2024年度)

https://www.sapientica.com/faq

・入室金 33,000円

・1年生 22,000円

・2年生  23,100円

・3年生  25,300円

・4年生  45,650円

・5年生  57,750円

・6年生  66,000円

●日能研

https://www.nichinoken.co.jp/guide/before/05.html

・入会金22,000円

3年生

予科教室・授業料
(9月~2025年1月 全18週)
国語・算数70分×2コマ/週11,440円/月
マイファーストテスト
(9月~2025年1月)
国語・算数全5回16,500円
教材費等(9月~2025年1月)国語・算数 13,860円

4年生

本科教室・授業料
(9月~2025年1月 全18週)
Wコース4科70分×4コマ/週22,880円/月
2科70分×3コマ/週17,160円/月
G・Rコース4科70分×4コマ/週22,880円/月
2科70分×3コマ/週17,160円/月
学習力育成テスト
(9月~2025年1月)
4科全9回34,650円
2科全9回29,700円
日能研全国公開模試
(9月~2025年1月)
4科全5回19,250円
2科全5回16,500円
教材費等(9月~2025年1月)4科 24,827円
2科 19,767円
副教材費(9月~2025年1月)4科 2,134円

5年生

本科教室・授業料
(9月~2025年1月 全18週)
Wコース4科70分×6コマ/週29,700円/月
2科70分×4コマ/週21,340円/月
G・Rコース4科70分×6コマ/週34,870円/月
2科70分×4コマ/週26,950円/月
学習力育成テスト
(9月~2025年1月)
4科全9回39,600円
2科全9回29,700円
日能研全国公開模試
(9月~2025年1月)
4科全6回26,400円
2科全6回19,800円
教材費等(9月~2025年1月)4科 34,056円
2科 23,881円
副教材費(9月~2025年1月)4科 5,995円

6年生

本科教室・授業料
(9月~12月 全16週)
Wコース4科70分×9コマ/週35,640円/月
2科70分×5コマ/週26,400円/月
G・Rコース4科70分×12コマ/週47,520円/月
合格力育成テスト・合格力実践テスト
(9月~12月)
4科全12回52,800円
2科全12回39,600円
日能研全国公開模試
(9月~12月)
4科全5回30,250円
2科全5回24,750円
教材費等(9月~2025年1月)4科 45,947円
2科 30,591円
副教材費(9月~2025年1月)4科 9,075円

●早稲田アカデミー

https://www.waseda-ac.co.jp/cost/?bid2=footer

・入塾量22,000円

・1年生、2年生 

受講料17,000円/月 別途年会費1,870円/月・教材費が必要となります。 料金は税込です。

・3年生

受講料【2月・3月】
2科コース:13,420円/月 【4月~1月】
4科コース:26,730円/月 別途年会費1,870円/月・教材費・必修テスト代が必要となります。

・4年生

受講料4科コース:30,360円/月 別途年会費2,900円/月・教材費・カリキュラムテスト代が必要となります。 料金は税込です。

・5年生(公立中進学コース、最難関高校志望者コースあり)

受講料4科コース:49,060円/月 別途年会費2,900円/月・教材費・カリキュラムテスト代が必要となります。 料金は税込です。

・6年生(公立中進学コース、最難関高校志望者コースあり)

受講料4科コース:50,050円/月 別途年会費2,900円/月・教材費・必修テスト代・前期土曜YT講座代が必要となります。 料金は税込です。

●栄光ゼミナール

不明:要資料請求

どの塾も、毎月の支払いの他に、春期講習、夏期講習、冬期講習があり、場合によっては合宿もあるようです。とにかく季節講習の支払いに追われることになります。学年が上がるごとに日数や時間も増えるため、季節講習代も増えていくため、なかなか恐ろしい状況になります。

2月の勝者では課金、重課金などと称していますが、必要に応じて個別指導を組み込んだり、家庭教師を入れたりするため、目標の偏差値や学校にむけて成績が伸びない場合は、さらに費用が増えます。また、課金・重課金したとしても子どもの学力は直ちに正比例するわけではありませんから、子どもも苦しみますが、親の財布も苦しむことも予想されます。

■中学受験前にかけると良さそうな費用

子ども2人の中学受験を経験して感じたのは、入塾時の学力がある程度固定化されてしまうため、入塾時の偏差値あるいは、試験に慣れたころの偏差値が目標とする偏差値と差が大きいと、子どもにとってはシンドイ中学受験になりそうです。

そのため、ある程度基礎学力を高めておく必要があります。また、中学入学以降に困らないように英語は入塾までにある程度学習させている家庭もあります。

そろばんや公文式などを通じて、算数、国語の力を伸ばしたり、漢検、数検などの検定に取り組むことを視野にいれておくと良さそうです。一部の受験勉強に向いている子どもですと、スポーツを続けながら受験勉強をして目標とする学校に入学するつわものもいますが、お子さんがそのようなタイプなのか判断することは難しいかもしれません。

ここから言えることは、中学受験は1年生くらいからどんなステップで基礎学力を固めていくかの計画も大事だということであり、単純に受験期の3年分の塾代をねん出すればよいというものでもないのです。

●そろばん塾の費用:4,000円~12,000円

そろばん教室の月謝はいくら?月謝の相場と教室の選び方などを解説

●公文式

・入会金:不要

・月額会費:幼児・小学生 7,700円(東京、神奈川の場合)

会費とお支払い方法

https://www.kumon.ne.jp/tetsuzuki/kaihi/index.html

ただし、そろばんも公文式もデメリットがありまして、頭の中で計算が完結したり、プロセスを記述しないため、算数においては計算は強くなるが、記述が上手く書けない可能性があります。(実体験)

■必要な年収の目安

今までこの記事を読んでいただいた方はおわかりいただけたかと思います。とにかくお金がかかります。

教育資金をコツコツ積み立てているご家庭が多いと思うのですが、中学受験期には将来の大学進学資金の準備という貯蓄の他に、増え続ける塾代という支出が同時に存在します。

そのため、いくら年収が必要かということよりも、毎年100~120万円くらいの黒字が確実に出るご家庭でないと受験の継続が困難になります。そして、私立中高に進学すれば、入学金、毎年の学費で受験が終わったとしても毎年100~150万円は支出がつづきます。加えて中学からは部活動が必須の学校が多いため、部活動の費用もかかります。

それを踏まえて子どもが一人なら、年間100万円の黒字が受験の目安、子どもが2人なら年間200万円の黒字が受験の目安です。子ども一人増えるにつき100万円の黒字を増やせるかがカギとなります。

そのため夫婦の働き方が重要です。一方で、夫婦でフルタイムで働くと子どもの受験の支援が難しいため、親がパンクしてしまうこともあります。皆さん受験にメリットを感じて取り組むわけですが、デメリットもあることを認識されるといいでしょう。

■関連情報

予算がヨーロッパの一国レベルである東京都は、10万円と学費に比べるとわずかではありますが、就学支援を行っています。参考に確認されることをお勧めします。

(公財)東京都私学財団 私立中学校等授業料軽減助成金事業

https://www.shigaku-tokyo.or.jp/pa_jugyoryo_chugaku.html

私立中学校等授業料軽減助成金 リーフレット

https://www.shigaku-tokyo.or.jp/pdf/pamphlet/r6_brochure_jr.pdf

東京都 所得制限なく私立中学校等の授業料支援(10万円)が受けられます

9月2日からオンラインで申請受付を開始

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/08/28/11.html

スクールポット 2023年8月号 私立中高一貫校の学費支援制度

https://www.schoolnetwork.jp/jhs/maniax/2023-08/index.php

東京都が本格的に動き出したので、今後政府や他の自治体の動向が気になるところです。

■まとめ

いかがでしょうか。今の手取りから支出を差し引いた余力はいくらありますうか?ご自分で計算するもよし、ファイナンシャルプランナーと話し合いながら、中学受験の家計的な余力を確認するのもよし。あなたとお子さんに未来のための資金計画を、ライフプランの窓口と一緒に考えましょう!