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産まれてすぐの赤ちゃんの見ている世界とは?
前回、赤ちゃんたちが産まれてすぐに育てたい所は「目」というお話をさせて頂きました。
産まれてすぐの赤ちゃんは、目から30cmくらいの距離にピントが合うようになっています。
30cmくらいというのはお母さんが抱っこをして授乳をして、赤ちゃんとちょうど見つめ合う距離です。
また、視力は0.01~0.02ほどですのでぼんやりとした世界です。
そして、見えている世界は白黒です。
濃い赤は黒に、薄いピンクは薄いグレー、と言ったように白黒での濃淡しかわかりません。
色の判別ができるようになるのが、だいたい生後3ヶ月の頃です。
大人とはずいぶんと違った見え方をしていることにびっくりしますよね。
赤ちゃんへ、私たち大人ができることは?
「見る」ということに限らず、赤ちゃんたちは「本能でやるべきこと」「獲得しなければいけないこと」を知っています。
大人が出来ることは、環境を整えてあげてそっと見守るだけ。
では、私たち大人とはちょっと違った世界を味わっている赤ちゃんへ「目」を育てるための環境はどのように整えてあげたらいいでしょうか。
「見る」ことを伸ばしてあげる環境作りの3つのポイントは?
オススメするのはモビールです。
このモビールの選び方や提供の仕方にもポイントがあります。
ポイント1
ポイントの1つめは濃淡のあるもの。
モンテッソーリ 教育では「ムナリモビール」や「ゴビモビール」などがよく紹介されています。
インターネットで調べると作り方がダウンロードできる素材と一緒に紹介させていたり、販売されていたりもするのでこれから赤ちゃんを迎えるときはご用意されてもいいかと思います。
見た目も美しくて、大人も見ていると不思議と心が落ち着きますよ。
ポイント2
ポイントの2つ目はモビールを下げる位置です。
冒頭でお伝えしたように産まれてすぐの赤ちゃんのピントは30cmくらいに合っているとお伝えしました。
ですので、モビールを下げる位置はモビールの中心がだいたい赤ちゃんから30cmの距離に下げてあげることが大切です。
ポイント3
3つ目は日中起きている時に過ごす場所にセットしてあげるといいでしょう。
睡眠、食事(授乳)、排泄(おむつ変え)全て終えた時があそびの時間(お仕事の時間)に最適です。
テレビは消して静かな環境にしてあげることも大切です。心地のいいBGMを流すのもいいかもしれません。
この3つのポイントを押さえることで、赤ちゃんはモビールをじーーと見つめます。
ゴビモビールやムナリモビールはモチーフの高さに段階があるので、時には30cmより高い位置にピントを合わせたり、低い位置にピントを合わせたり、風でゆっくりと揺らぐモビールを目で追おうとします。
そうした経験をすることで、「目を育てる」ことに繋がって追視(動くものを目で追う)やピントの調節が出来るようになっていきます。
生後3ヶ月頃から色の識別も出来るようになるので、色のついたモビールを用意してあげてもいいと思います。
春なら桜やてんとう虫、ちょうちょ、秋なら紅葉の葉やドングリなど、季節を感じられるものを手作りしてもいいですね。
簡単な手作りでオススメなのは100円均一に足を運んで見ると、季節の造花や飾りがたくさん店頭に並んでいるので、使えるものがいっぱいです。
赤ちゃんのちょっとした発達の過程を知ることで、私たち大人が用意してあげたい玩具や環境が自ずと見えてきます。
環境を整えてあげたら、その様子を観察することも大切なことの1つです。
いそがしい育児の中で大変かと思いますが、子どもたちの成長は目覚ましく日々変化していきます。
1日の中で短い時間でいいので、お子さんの様子をじっと見てみるお時間を作ってみることをおすすめします。
せっかくモビールを用意したのに、あまり見なかった。じーと見る時間があった。など色んな姿が見られると思います。
お母さんも家事の手を休めてお茶をしながらゆったりとした気持ちで過ごさせると、赤ちゃんにも心地のいい空気が伝わっていくと思います。
お母さんに限らず、側にいる人の気持ちを察するのが子どもたちは本当に鋭いなと保育士時代によく感じておりました。
寝かしつけをしているときに「今日は早く寝てほしい!」と気持ちが焦っていると、子どもたちにも伝わってクラス全体がそわそわしてしまったり、反対にゆったりとした気持ちでいると「あれ?もう寝ちゃった?」とびっくりするくらい静かに眠りについたり。
大変な時こそ周りに助けを求めて、お子さんと離れてみてお母さんもリフレッシュされてくださいね。
目を動かすメリットとは?
実は「目」を育てることは、脳の観点からみると「前頭葉」を発達させることに繋がります。
目の運動(追視)やピントの調節をすることで前頭葉の血流が良くなります。
前頭葉は感情のコントロールを司る場所でもあるので、目の運動をすると感情のコントロールの上手な穏やかなお子さんに育ちます。
現代の子どもたちは携帯やタブレット、テレビ、パソコンに触れる機会が格段に多いです。
これらのものも全て悪いわけではありませんが、便利な反面「目を動かす」と動きとは反対の動きになってきます。
ですので、小さい頃に積極的に「目を動かす」ということを日常の中に取り入れてあげることが大切かなと思っております。
難しく考えずに、外で思い切り遊ぶだけでもたくさん目を動かすことができますので、産まれてすぐだけでなく、2歳、3歳になってもお子さんたちの目を意識的に動かす遊びを時々やってみてくださいね。
次回は「これからの子どもたちにつけて欲しい3つの力」についてお話させていただきます。
執筆:川端愛未(保育士、モンテッソーリ教師)