「団信に入れなかった!どうすればいい?」
何のことかわからない方が多いかもしれませんので解説します。
一般的に住宅ローンを借りるときに、銀行が保険料を払う生命保険に加入することが、住宅ローンを借りる条件の1つになっています。
ライフプランの窓口での無料FP相談では、団信の告知義務違反に関する相談は受けていません。
また、生命保険であるため、健康でないと加入できません。健康でなかったり持病があったりすると住宅ローンが借りられないのです。
この事実を知らない方がたくさんいらっしゃると思います。知っていたとしても、「そうは言っても大丈夫でしょう」と気楽に考えている人も多い印象です。
目次
失明状態のAさんの場合
先日、ある不動産会社からFP相談の依頼がありました。
- ある疾患で視力を奪われたAさんが団信に入れなかったので、生命保険で代替したいのだが提案してほしい。
というものでした。結論からすると、一般の生命保険での対応は不可能でした。団信には加入できません。
持病のある方でも入れる生命保険では、住宅ローンと同額の保険料支払いとなるため加入するゆとりはありません。焦点となったのは、
- 子供の頃親がかけていた保険で死亡保障が確保できないか
というもの。しかし医療保障が中心で死亡保障は少なく団信の代わりにはなりません。続いて、
- 虚偽告知をして加入する
というもの。しかし、手続きが本人だけではできませんので、銀行で手続きの最中にばれることが確実です。
見えない障害や疾患であれば、銀行も不動産会社も見て見ぬふりをしますが、見えやすい、わかってしまう障害や疾患では、虚偽告知による加入は使えません。
健康診断でひっかかったBさんの場合
あるとき、別のBさんから相談がありました。
- 健康診断結果の数値が良くないので団信に入れないかもしれない。一度相談したい。
というものです。虚偽告知による告知義務違反を犯して団信に加入する相談は、専門家として「やりましょう」とは言えません。
団信の告知義務違反による裁判事例と判決を調べて、お客様にリスクを説明したところ、マイホーム購入を断念されました。
そして数年後、がんと診断されたとのこと。ご家族の方からは、「あの時に無理して家を買わないで良かった。ありがとうございます」というお礼の言葉を頂きました。
あのとき、虚偽告知で加入していたら、告知義務違反となって住宅ローンの一括弁済を求められるなど、生活が破たんしていた可能性があります。
結果として嘘をつかずに良かったという事例があります。
その一方で、持病があるものの、住宅ローンを返し終わるまで事故無く終える方もいます。
Aさん、Bさんのその後
Aさんは今後どのように考えて家を買うのでしょう。Bさんはその後お亡くなりになりました。
誰が正しかったのか、いまだにわかりませんが、専門家として「ダメなものはダメ」と言える強さと気概をもつ必要があると感じます。
団信の告知義務違反は氷山の一角といいますか、おそらくたくさんあるのだろうと思います。
たとえば、完治しないメンタル疾患は告知しなければばれることはないでしょう。手術痕なども、服に隠れて見えないこともあるでしょう。
生命保険の手続きでは、入れ墨やタトゥーがあると加入できない場合もあります。
住宅ローンの団信はそこまでみているかわかりませんが、健康上の理由、反社会的勢力への資金提供などを考えると、本来は団信には加入できないのだろうと考えます。
住宅ローンの団体信用生命保険に入れないときに健康であると偽って入るとどうなる?という質問に対しては、そんなことは絶対やめましょうという答えの一択です。
もし、実証実験をしてみたいという方がいらっしゃれば、試しに病歴を隠して加入することも、検討の余地ありです。
ただし、告知義務違反が判明した時(借りた方が亡くなった場合)に、住宅ローンの残額を一括払いできるよう、事前に資金計画を万全にしておくことをおすすめします。
住宅ローンの団体信用生命保険に告知義務違反をしてまで、加入したいと考える理由は1つ。家を買いたいのです。
一般的に人間の健康状態は、年齢を重ねるほど崩れていきます。ということは、住宅ローンの審査を考えるときに、健康であることはかけがえのない財産なのです。
健康は金で買えない。家は健康でなければ買えない。
今回のケースでどのようにすればよかったのか、正解はありません。
しかし、若いうちにこのような事態に備えて、生命保険に加入しておけば、問題なく家が買えたのです。
つまり、若いうちに5,000万円の生命保険に加入したとすれば、後々病気になったとしても、5,000万円受取れる権利は残ります。
社会人になったばかりで、高額の生命保険に加入するのもばからしいと感じる人の方が、多いかもしれません。しかし、何が起こるかもわからないのです。
他にも方法はあります。
お金に詳しい20代で、大手企業に就職してすぐ、家を買う人がいます。
住宅ローンの審査が緩いうちに家を買って、結婚のタイミングで売却したり、そのままファミリーで住み続けたり、色々な選択肢があります。
家賃が10万円の人であれば、23歳で家を買えば、58歳で完済できますし、1年間で120万円の家賃支払いを考えれば、住宅購入の時期が後ろにずれるほど一生涯の住宅費用がかさみます。
独身の身でファミリータイプの家を買うのは無駄なように思えますが、色々なリスクを考えると、早めに買うということは、案外賢い選択なのかもしれません。
賢者は歴史に学び、凡人や愚者は経験から学びます。しかし、他人の経験から学び取ることが、最も害なく正しいのかもしれません。