2015年4月よりスタートした「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の
非課税制度」。
2019年3月31日までの4年間限定の制度でしたが、2019年度税制改革により、2021年3月31日まで期間が延長されました。
お孫さんやお子様への結婚・子育て資金贈与をお考えの方、相続税対策をお考えの方は検討されるのも良いかと思います。
今回は、結婚・子育て資金の一括贈与の特例制度についてご紹介したいと思います。
<結婚・子育て資金の一括贈与の特例制度って何?>
「ゼクシィ結婚トレンド調査2018」によりますと、結納・婚約から新婚旅行までにかかった費用の平均総額は、488万円。
貯金で足りない結婚費用は、親・親族から援助してもらった人が多いようで、実に76%の人が援助してもらい、援助の平均額も202.7万円となっています。
結婚がひと段落し、その後、妊娠出産した場合も費用はかかります。
妊婦健診+出産・入院費用+マタニティ&ベビー用品費用の総額は809,418円となります。
そこから、出産育児一時金の支給額42万円を差し引くと、妊娠出産に伴う自己負担総額は389,418円となります。
<内訳>
妊婦健診自己負担額:5万7604円
出産・入院費用:621,814円
マタニティ&ベビー用品費用:13万円
出産育児一時金:+42万円
(たまひよ調べ)
先述の結婚費用平均額488万円と出産費用389,418円を合わせると、約526.9万円かかる計算になります。
※出産育児一時金控除後
最近は堅実な方も多くなり貯蓄平均額は、2012年の303.6万円に対して、2018年は345.7万円と着実に増えています。
しかしながら、結婚や子育て資金を考えると、親や親族からの支援が少しでもあると心強いですね。
通常、子供が親から結婚資金としてまとまった金額の贈与を受けた場合、そのお金を結婚生活に必要なものを購入するために全額使うのであれば贈与税はかかりません。
しかしながら、それを預貯金にしたり、違った目的に使用する場合は110万円を超える金額に贈与税がかかります。
そのような場合に有効なのが「結婚・子育て資金の一括贈与の特例制度」に
なります。
この制度は、2015年4月から2021年3月31日までに結婚子育て資金に利用目的で、20歳以上50歳未満の人が父母や祖父母から贈与を受けた場合、1000万円まで贈与税が非課税になる制度です。
それでは、結婚子育て資金一括贈与の手続き方法についてみていきましょう。
■手続き方法はどうすればいいの?
親が子供に結婚子育て資金を贈与する場合の手続き方法をご紹介します。
① 信託銀行にて親と信託銀行が結婚資金贈与の契約書を締結し、資金を預ける
② 子供が挙式費用や引越費用の明細書を信託銀行に提出
③ 信託銀行から子供の銀行口座に結婚資金がその都度振り込まれる
上記の流れにより、結婚子育て資金贈与が行われます。
それでは、結婚・子育て資金贈与は具体的にどのような用途で使えるのでしょうか?
ご紹介していきたいと思います。
■結婚子育て資金贈与の使い道
<非課税になるもの>
●結婚費用(300万円まで)
・挙式費用
・会場代
・招待状購入、作成費用
・結婚を機に部屋を借りる場合の家賃・仲介手数料等
・引越代(入籍前後1年)
●子育て費用
・不妊治療費
・妊婦検診費用
・出産時の入院費、分娩費、入院中の食事代等
・産後ケア代
・子供の治療費、予防接種代(小学校入学まで)
・子供の入園料、保育費、ベビーシッター代等
<非課税にならないもの>
・結婚指輪/婚約指輪購入費用
・エステ代
・新婚旅行費
・不妊治療のための遠隔地への交通費、宿泊費等
つづいて、結婚子育て資金贈与信託をどこの信託銀行で取り扱っているかをご紹介します。
■結婚子育て資金贈与信託を行っている主な信託銀行
- みずほ信託銀行「希望の贈りもの」https://www.mizuhobank.co.jp/retail/products/succession/marriage/index.html
- 三井住友信託銀行「つなぐ想い」https://www.smtb.jp/personal/entrustment/management/marriage/
- 三菱UFJ信託銀行「結婚子育て支援信託」https://www.tr.mufg.jp/shisan/kekkonkosodate/
結婚子育て資金の払い出しが、来店しないとできない信託銀行、アプリでもできる所、信託手数料が無料など、信託銀行によって様々な特色がありますので、いくつか比較検討して信託銀行を決めるのが良いでしょう。
まとまった金額を非課税で生前贈与できるので、贈与をする側にも相続税対策のメリットがあります。
デメリットしては、提出物が面倒ということがあげられます。
先述のとおり、贈与を受けた子供が銀行口座から結婚子育て資金を引き出すには、信託銀行に領収書等を提出しなければいけません。
その際、使用内容によっては領収書のみならず、戸籍謄本や住民票の写し、賃貸借契約書のコピーや母子手帳のコピー等も必要な場合があるため、手続きが面倒と感じる方もいらっしゃるかと思います。
そのような場合は、まとまった金額を贈与してもらうのではなく、その都度
贈与してもらうといった選択肢もありますので、親御さんとよく相談して決めましょう。
最後に、2019年4月にこの結婚子育て資金一括贈与の税制改正がありましたので
まとめておきます。
<結婚子育て資金の一括贈与制度の改正点>
■2021年3月31日まで期間延長。
■受贈者の前年の所得が1000万円超の場合は制度利用不可
※受贈者とは、お孫さんやお子様のこと。
社会人のお孫さんに贈与する場合は要注意
結婚子育て資金一括贈与の特徴、改正点についてご紹介しました。
2021年3月31日までの時限措置のため、利用を検討している場合は早めに行動した方が良いでしょう。
(文:山崎美紗)